<2> 機内にて
 馬頭琴の形は、上端の馬頭の彫刻以外は、わりと三味線に似ている。四角い共鳴胴を約1mの棹が貫く構造が同じだからだ。そのため馬頭琴を布袋に入れて持ち歩くと「三味線ですか?」と尋ねられたりする。その度に「いえいえこれは馬頭琴ですモンゴルの楽器です弓で弾きますスーホの白い馬が…」などと説明するのは面倒なので、馬の頭だけ外に出すことにした。これを見て「それ馬頭琴ですね」なんて声かけられたら、ちょっと嬉しいし。

 馬頭琴のハードケースは頑丈だが重い。だから移動が多い時は布袋などのソフトケースが便利だ。ただ、これだと飛行機に乗るとき厄介が起こる。搭乗手続きのカウンターでは、旅行カバンは預けても、ソフトケースの楽器は心配で預けられない。担当者に機内持ち込みにしたいと言うと「何ですかそれ?え?バトーキン?」といかにも訝しげ。「もう1席分チケット買って下さい」とつれない事を言う航空会社さえある。

(c)ぽん田中 そこで最近は黙って機内に持ちこむことにしている。かと言って頭上のトランクには入れない。入らない場合もあるが、入ったとしても中でガタガタ揺れるのが心配なのだ。そこで、着席して膝の間に立てる。我ながら不審なモノに見える。案の定スチュワーデスさんが必ずやって来る。万が一の時、脱出を妨げるものは好ましくないそうで、空席があればそこに楽器を移して固定してもらう。この前、我が愛馬は空いていたスーパーシートに固定された。演奏者の方はずっとエコノミーに固定されたままなのに。

 満席の時はずっと膝の間だ。この状態でドリンクサービスが来てテーブルをセットすると、ちょうどテーブルから馬が顔だけ覗かせる。どう見ても、「大好きなお馬さんとおやつの時間」になる。

嵯峨治彦のおうまさんといっしょ
 <2>機内にて
2002/01/18

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