<6> 学校公演
 高校生の時、ひどい芸術鑑賞会があった。高校にやってきたのは数人のクラシック金管アンサンブル。彼らは生徒達のあまりの私語の多さに何度も注意した。最後には、ちゃんと聴いていて終わりが分かった(私をはじめとする)ほんの一部の生徒からのアンコールにも応えず、怒って帰ってしまったのだ。まるで最近の「成人式」である。こういうのって希望者のみの参加じゃいけないんだろうか。

 時は流れ、有り難くも今度は私が学校からの演奏依頼を受けるようになった。経験上(?)「学校公演」というのは手強い。普通のライブと違って、皆がみな演奏に関心を持っているわけではないし、子供たちは演奏に対する反応を実にストレートに態度に表す。もっとも、馬頭琴や喉歌に限らず「未知の」音楽は、子供たちの関心をある程度集められるものだが、それを「演奏会」として成立させるには、一般のライブ同様、聞き手の協力も要るのだ。

(c)ぽん田中 昨年ある中学校に呼んで頂いた時のことだ。難しい年頃の生徒たち。人数もちょっと多め。さらに会場は残響が多い体育館で、正直すこし演奏しにくい状況かなと心配した。ところが演奏会が始まると、生徒たちは集中力も反応もとても良くて、私も楽しんで演奏することができた。

 この嬉しい結果は、演奏内容や当日の音響作りだけから得られたのではない。実は演奏会のかなり前から、担当の先生が中心となって、モンゴルの音楽やその背景、さらに演奏者のプロフィールに至るまで、資料やビデオを使って生徒たちの興味を十分に引き出しておいてくれたのである。

 学校公演がうまくいったと感じる時、大抵は事前にこのような準備があったという場合が多い。目を輝かせて聴いてもらうのは、演奏者にとって一番嬉しいことなのだ。というわけで、今後とも一つ「よろしく」お願いします。

嵯峨治彦のおうまさんといっしょ
<6>学校公演
2002/02/15

のどうたの会 ホームへ


All rights reserved.
(c) The Throat-Singing Soceity, Japan
のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp