<15> 何かご質問は
  ライブの後の交流会では、お客さんから、感想のほか、色々な質問が飛び出してくる。

 一番多い質問は馬頭琴の奏法や喉歌の発声に関するもので、これにはなるべく丁寧に答えている。自分もかつてモンゴルの演奏家達にそうしてもらったし、もしかしたら馬仲間や喉仲間が増えるかもしれない。次に多い質問は、こういう音楽や演奏の仕事を始めたきっかけについて。手短に答えても、相手が進路や転職で悩んでいたりすると、結構盛り上がる。

(c)ぽん田中 時には演奏とあまり関係ない事を聞かれることもある。あるライブの終演後「サガ君、食えてるう?ガハハハ!」と大声をかけてきたのは、札幌の某八百屋さんで働くS氏。健康と農業を考え厳選した野菜を売っているその店で、彼はバリバリ働いている。私は数年前(学生時代)、彼の結婚式で記念演奏をさせて頂いた。久しぶりの再会でこんなことを言われたのに、不思議と腹は立たなかった。むしろうれしいとさえ感じたのは、ほぼ同世代の彼も、見たところ元気に「食えてる」みたいだったからだと思う。

 これと対照的なのは、終演後に私のCDを買いに来た初対面の上品そうな女性が真顔で言った質問だ。「いろいろ大変なんでしょ?」…最初、何のことやら分からなかったのだが、どうやら私の暮らしぶりについてご心配(又は興味津々)の様子。まぁ、礼儀の有無を別にすれば、無理もない疑問ではある。未知なる国(モンゴル)の未知なる音楽(馬頭琴と喉歌)を未知なるミュージシャン(私)が演奏してるわけだからね。でも、大草原の音楽を2時間近く演奏した後でこんな質問が出てしまうとは、私の修行が足りないのか、世の中すべてカネなのか、モンゴルの空のようにブルーな気分になってしまった。演奏者としては、やはり金銭より琴線に触れてほしかったわけで。

嵯峨治彦のおうまさんといっしょ
<15>何かご質問は
2002/04/19

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