<16> これから
  馬頭琴との出逢いは私の生き方に予想外の展開をもたらし、私は音楽の世界に足を踏み入れることになった。時には大変なこともあるが、今こうして演奏活動を続けていられるのは、非常に幸運なことだと思っている。この背景には、広く日本に紹介された馬頭琴誕生の物語「スーホの白い馬」の存在が大きい。でも、やはり直接的には演奏を聴きに来てくれる方たちや共感できる音楽仲間たちのおかげである。おうまさんと一緒の旅は、生きるということをいろんな意味で実感させてくれる。

 実は、おうまさんの方も旅をしている。馬頭琴はモンゴルの遊牧民に伝わる古くからの伝統楽器であると同時に、20世紀半ばから急速に舞台芸術化し始めた新しい楽器でもあるのだ。クラシック音楽などの影響を受けながら表現の可能性を模索する現代の馬頭琴音楽は、非常にセンスの良い作品からアレンジに多少疑問を感じてしまうものまで、実に混沌としている。だから、面白い。

(c)ぽん田中 そして、数年前からおうまさんたちは日本にも渡って来て、日本人奏者を生み出し始めた。東京、大阪、名古屋の、モンゴル人奏者による馬頭琴教室は盛況だと聞く。日本人奏者は今後もっと増えていくだろう。

 モンゴルとはあまりに違うこの島国で、おうまさんたちは今後どのような音楽を奏でていくのだろうか。これまでお会いしたモンゴル人奏者の大御所たちのご意見には、日本人奏者にも伝統保守を求めるものから「外国」ゆえの発展を期待するものまで色々なものがあった。私としては、伝来した一つの音楽文化が日本的発展をしていく現場に立ち会いたいと願っている。

 さて、この連載は今日でおしまいだが、私の「おうまさんと一緒」の旅はこれからも続く。今度はライブ会場でお会いしましょう。ではでは。

 ※ライブ情報 → http://tarbagan.net/nodo/

嵯峨治彦のおうまさんといっしょ
<16>これから
2002/04/26

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