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「大草原の歌声 喉歌に魅せられて」

スポニチ北海道版 コラム「あの人この人北海道とってお記」 より


★3★ 出会い − 可能性がどんどん広がる!

(1998年 8月29日掲載)


 喉歌は、唸るような声に加えて、笛のような高い音で同時に旋律を奏でる特殊な歌唱法である。

 最近ではモンゴルの喉歌ホーミーを知る人も少なくないし、喉歌のCDもずいぶん増えた。また個人的にも、多くの喉歌ファン達と知り合うことができた。喉歌の世界はホットになりつつある。

 92年、喉歌に出逢い、練習を始めた当時は、あらゆる「唸り声」で試行錯誤を試みていたが、その練習を訝しそうに眺めて行く人はいても、近づいて来る人は皆無だった。喉歌は孤独なものだと思った。

 そもそも日本のように喉歌の伝統を持たない地域では、喉歌が否定的な印象を持たれる場合も少なくない。これは、喉歌の価値観が「常識」とは全く異なっているからだ。喉歌の世界での「良い声」は、しゃがれ声やだみ声であるし、演奏者も聴き手も、普段意識しない声に含まれる倍音の方を楽しむ。決して親しみやすい音楽ではない。

 しばらく続いた孤独な日々の中で、ふとしたことからある博物館の学芸員さんに出会った。彼は民族音楽に造詣が深く、喉歌の独習を試みる私を励ましてくれたばかりか(!)、大勢の民族音楽ファンを紹介してくれた。その出会いが演奏活動を始めるきっかけになり、演奏活動はさらに多くの出会いを生んでいった。

 現在では、聞いてくれる人や同志がいればこそ味わえる音楽の喜びにも触れ始めた。喉歌の素晴らしさを共有できる友との会話、合奏、演奏を聞いた人が何らかの感動や共感を覚えてくれる瞬間、そしてその相互作用の中での自分の表現の追求等々。このような喜びが喉歌という非常に特殊な音楽から得られるとは、予想していなかった。

 音楽には普遍性と多様性があるが、その両方を楽しめる人が最近増えているようだ。その気になれば世界中の声が聞ける、そんな良き時代ならではの音楽との関わりあいを始めてみませんか?

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のどうたの会 嵯峨治彦 thro@sings.jp