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「大草原の歌声 喉歌に魅せられて」

スポニチ北海道版 コラム「あの人この人北海道とってお記」 より


★5★ コンテスト − 「外国人部門」で優勝に歓喜!!

(1998年 9月12日掲載)


 今年7月、喉歌(のどうた)ホーメイの故郷であるロシア連邦トゥバ共和国で、ユネスコ主催「第3回国際ホーメイ会議」が開かれた。

 メインイベントの喉歌コンテストには、トゥバから30組、国外から10組が参加した。そこでは喉歌そのものの技術はもとより、楽曲の歌詞、楽器演奏、衣装など、すべてが総合的に評価される。

 日本の喉歌デュオである我々タルバガン(等々力政彦&嵯峨治彦)も今回初めてコンテストに参加した。最近やっと喉歌が「伝来」したばかりの日本からの参加者が、現地の音楽家たちと同じことをしたのでは、やはり勝ち目はないだろう。そこで我々は作戦を練った。

 まず喉歌を交えつつ、遊牧民の伝統楽器で日本の局を弾き語る。次に、トゥバの曲にモンゴルの曲を融合させた新曲を演奏する。これは、冒険だった。トゥバと隣国モンゴルには民族的確執があるのだ。それを承知で敢えて現地の音楽家が絶対やらない曲調に挑んだ。

 その結果「外国人部門」で優勝、総合成績でも地元の名手に次いで準優勝をおさめた。喉から手が出るほど入賞を願っていたわけではないが、この予想外の成績には素直に歓喜した。同時に、喉歌への様々な思いが胸を駆けめぐった。

 トゥバでは、伝統音楽ホーメイがいろいろな影響を受けて変化していくことを、自然なことと捉えているようだ。この伝統と創造の調和こそが、タルバガンの目指すところでもあり、喉歌文化をより豊かにしていく上で非常に重要なことに思える。

 授賞式と上位入賞者の記念演奏の後、多くの人々が我々を祝福してくれた。あるおじいさんは、演奏に織り混ぜたモンゴル曲のパートに気付き、大変に喜んでくれた。彼はトゥバに暮らす少数民族としてのモンゴル人だった。固い握手を交わした彼の節くれ立った手を思い出す度、喉歌との出会いがもたらした喜びを噛みしめずにはいられない。

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のどうたの会 嵯峨治彦 thro@sings.jp