『楽器の部品アイデンティティと伝統曲』
(1999年 1月8日 NNL vol. 11)
モンゴルの弓奏楽器モリンホール(馬頭琴)は、弓だけでなく二本の弦も馬の尾の毛を束ねて作る、遊牧文化圏の楽器だ。 二胡やバイオリン等の他の弓奏楽器と同様、もともと千数百年前にペルシャのあたりで生まれた弓で弾く楽器を祖先に持つといわれている。その楽器がシルクロードをさまよう内に、各民族の美意識、その土地の材料などを反映しながら、徐々に進化して現在に至るのだ。 先日モリンホールのことでちょっとした発明をした。詳細は省くが、小さな木片二個で、この楽器の調弦が非常に簡単になってしまうのだ。これまで微調整で苦労していただけに、我ながら欽ドン賞でも授けてやりたい気分だった。 こうして自分の楽器に小さな部品を追加したとき、他の元々の部品にも、それぞれ誕生の瞬間があったことに気づいた。 楽器の独学や独奏に不思議なほど孤独を感じないのは、その楽器の音色や形、そして部品の一つ一つに、伝えてきた多くの先人達の思いが込められているからなのかも知れない。 |
のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp