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「遙かなるモンゴルを行く」

●9/29(土) TV番組 「遙かなるモンゴルを行く」
 16:00〜17:00 STV(北海道内のみ)

 自分で言うのもバカみたいなんですが、今回の旅には「日本人馬頭琴奏者が初めてモンゴルに行って憧れの奏者と出逢い、大きな収穫があった」という、非常に分かりやすいストーリーがありました。また、他民族音楽に魅せられた者が抱える様々な悩みや、それに対する現地のミュージシャンの反応、さらにそのまたフィードバック等といった、モンゴルに限らず起こりうる音楽的文化交流の姿が生々しく登場しました。さらに、現地で音楽の根元的な喜びを体験することもできました。この辺のことは、のどうたの会のWEBページにツアーレポートとしてまとめています。
 私は、これを音と映像でやりたかったのですよ。でも、そういった内容では、一般の視聴者は楽しめないものでしょうかね?

 実は、今回のTV番組の構成に関して、制作者と私で意見が食い違っています。私の方からは、今回の旅の意義、他民族の音楽に取り組むミュージシャンとしての想い、そして番組を通して伝えたいテーマ他いろいろと意見を述べました。意見を交換しながらより良い番組構成を一緒に考えていきたかったのですが、制作者から番組構成のFAXが私のもとに届いたのは、放送予定日の3日前です。実質上、決定した構成の報告です。そしてその構成は、残念なことに私の希望した内容とはかなり異なったものでした。

 放送予定の内容ですが、私と某タレントK氏の2人が、それぞれゴビとホブドに行くという紀行もの、いわば2本立ての内容です。元々は私の紀行ものということで話が進んでいたのですが、日本を出発する直前に、突然K氏が絡むことになったのです。この取材のディレクターの方の上司の方が「決定」したことなんだそうですが、なぜ追加キャストが必要なのか、なぜ彼でなければならないのか、私には納得がいきません。ただ、その上司の方がおっしゃるには、一般の視聴者が楽しめるものにするのが大事なんだそうです。つまり彼の想定する視聴者というのは、その根底にどんな想いがあるかに関わらず、とにかく耳にインパクトのあるホーミーを表面的に紹介するだけで喜んでしまうような人たちということでしょう。これまで喉歌を取り上げたいくつかの番組には、非常に質の高いものもありました。ですから現在、さらに喉歌の番組を作るなら、かなり踏み込んだもの、新しい知見を加えるようなものでないと意味がないと忠告はしました。

 あと明言しておきますが、私はK氏に対しては怒りとか憤りはもちろん、一切の個人的な感情も持っていません。彼がタレントとして仕事をされるのは当然ですし、これまでモンゴルやホーミーに関心を持ち続けてきたことも理解しています。ただ、TVの仕事ってやつはすごいもんだなぁとは思いました。私がどんな活動をしているのか、そもそもどうしてゴビに行って来たのか、全くご存じないようだったのに、非常にTV的なリアクションによって旅の重要な総括をしている「シーン」が成立するんですから。これが「プロ」ってことなんでしょうかね。

 ま、いろいろありましたが、ハイビジョン撮影による美しい音と映像にはご期待ください。とりわけ、ネルグイさんの演奏風景は、日本のTV初登場なはずです。私なんかの個人的想いとは別に、楽しめる部分は多いはず。ぜひ見ていただきたい番組です。こんなことをぼやくなんて、私は旅の当事者ということで思い入れが強すぎるんでしょう。この番組の構成自体も、一般向けという意味ではOkなのでしょう。ただ、私は今、自分自身の好きなような構成でこの旅のドキュメントフィルムを作ってみたい。実際、モンゴル情報紙しゃがぁのスタッフの方や、ツアー客として参加して下さった方が長時間にわたってこの旅をビデオ撮影して下さっています。そういった映像と音を使わせて頂いたら、何か面白い作品ができるかも知れません。サンダンス、狙ってみる?!


のどうたの会事務局
thro@sings.jp