<7> ゴビ1〜ビール
  昨年の夏、ゴビで遊牧を営む馬頭琴の名手=ネルグイ氏を訪ねるツアーが組まれた。その名も「嵯峨治彦と行く馬頭琴・ゴビの旅7泊8日」(主催:風の旅行社/企画:モンゴル情報誌しゃがぁ)。私は「添乗演奏員」として同行したわけだ。これから3回にわたってその時のエピソードをご紹介しよう。

 まず旅の大きな楽しみに食事がある。モンゴルの代表的な料理は「塩ゆで肉」。大鍋に湯をわかして、解体したばかりの羊の肉、内臓、そして血詰めの腸をゆでて作る。広々とした草原でハーブを食べて育った羊は、塩で味付けるだけで御馳走になる。骨付き肉は、手も口も脂でギトギトにしてしゃぶりつき、骨が白くなるまできれいに頂く。実にうまい。

(c)ぽん田中 ゴビの雄大な地平を眺めながらの食事は最高である。こうなると次に欠かせないのは、やはりビールだ。同行したモンゴル側スタッフは缶ビールも販売していたが、肝心の冷蔵庫がない。そう言えば「冷たいビールは日が昇る前に」なんていう注意もあった。ぬるいビール…という現実が、余計に欲望を駆り立てる。この照りつける太陽と乾いた風の中で、冷たいビールをゴクゴクと喉に流し込めたらなぁ。

 そんな時、ツアーに参加したK氏が素晴らしい裏技を教えてくれた。濡れタオルで缶を包み水の気化熱で缶を冷やすというものだ。皆で井戸から汲んだ生活用水を少しずつタオルに含ませ、缶に巻いて日陰の風通しの良いところに置いて待つこと数十分。冷えた!予想を上回る効果がみられ、体感温度は「歯にしみる」ぐらいといっても過言ではない。この時飲んだ韓国製の缶ビール、泣けるほどうまかった。この大発見以降、ビールは飛ぶように売れ、結局モンゴル側スタッフが用意した分は、ゴビ最終日を待たずして無くなってしまった。

嵯峨治彦のおうまさんといっしょ
<7>ゴビ1〜ビール
2002/02/22

 


ゴビと馬頭琴の旅
〜天才奏者 牧民ネルグイを訪ねて〜

●フォト・レポート
 数々の賞歴に輝くゴビ在住の馬頭琴の名人ネルグイさんは、実際の遊牧生活を続けています。2001年夏、彼の奏でる真の遊牧民の音色を聞いてきました。ゴビの天才奏者と、日本人馬頭琴奏者の邂逅の記録。

のどうたの会 ホームへ


All rights reserved.
(c) The Throat-Singing Soceity, Japan
のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp