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ハンマーダルシマ奏者 小松崎健さんのエッセイ「打弦人生」からの引用です。

 

フィドルとヴァイオリン

小松崎健 [ハンマーダルシマ]

 ブレンダン・ブラナックという人が書いた「アイルランドの民俗音楽とダンス」という本に、「ヴァイオリン奏者は教育を受けたフィドル奏者ではないが、フィドル奏者は教育を受けないヴァイオリン奏者でないのは、なおさらのことである。」という記述があります。「フィドラー、イコール下手なバイオリニスト」と思っている人が結構いると思うけど、クラシックと民俗音楽は全く別の音楽大系だから、同じ価値観の中で評価するのは、間違い。フィドラーと言えども、芸術性の高い素晴らしい音楽を演奏する人は、いくらでもいます。キアラン・カーソンという人は、「アイルランド音楽への招待」と言う本で、「クラシックの演奏は芝居じみて下品。クラシックの音楽訓練は伝統音楽の演奏家の邪魔になるおそれがある。」と書いていますが(僕もバイオリニストが弾くリールは、下品に聞こえます。)、世界中の伝統音楽が、少しづつクラシックの教育を受けた人によって演奏されるようになってきて、だんだんと伝統音楽を理解する人そのものが減っている様な気がします。現にスコットランドの古いフィドル音楽は、ほぼ壊滅していると言われています。(その古いスタイルは、ドニゴールに残っているんだって)日本にも昔、「大正バイオリン」と呼ばれる素晴らしいフィドル音楽が生まれた。しかしクラシックのバイオリン教育が定着するに連れ、大正バイオリンは、へたくそな音程のずれたものと言う評価が広まったので、いつの間にか駆逐されてしまった。(日本ざりがにVSアメリカ・ザリガニみたい。)大正バイオリンの音程がずれて聞こえるのは、三味線音楽など、日本の伝統音楽の音程をバイオリンに移行したせいだと、僕は理解しています。

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主催:モンゴル情報紙しゃがぁのどうたの会

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