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『 「実践的」講演 』

(1999年 2月20日)


 昨年、某専門学校から講演を依頼された。対象は音楽業界へ進む学生達だ。早くに音楽を生業として選び、発声や楽器の研鑽に励む学生達に、恐らく見たこともない楽器や聞いたこともない歌い方は、きっと大きな刺激になるはずだ。講演は初めてだったが面白そうなのでOKした。

 喉歌の伝統的背景、原理、音楽を通じての出会い等の話に生演奏を交え、音楽とその価値観の多様性を紹介する授業案を作った。

 ところが、担当スタッフとの打ち合わせで、ほとんどが却下された。スタッフ側の要求は、有名アーティストとの共演の話をメインにせよというものだった。その方が「実践的」で刺激になるという。授業案を2度変更させられた上、講演直前にも念を押された。

 結局は最初の授業案に「実践的」な話を取って付けて講演したが、後味は悪かった。スタッフと講演者の意見対立は仕方ないにしても、講演から何を吸収するかという学生の感性に対して、スタッフが十分な信頼と敬意を払っていないのはどうかと思う。

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のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp