● ぽ  ん  日  記 ●

〜 中編 〜

 

◆8/1(月)くもり

 8:00、起床、朝食。
 パン・サラミ・キュウリ・トマトのスライス、コーンフークとミルク、オレンジジュース、コーヒー・紅茶というモンゴル定番のメニュー。

 10:00、気後れしつつ、乗馬。前回参加したツアーでは、スタッフ以外の乗馬体験者全員(もちろん私も)がお尻の皮を擦り剥くという苦い経験をしたのだ。

 それゆえ今回は、二の舞にならぬよう自分なりに慎重に試行錯誤を繰り替えしてみる。しかしながら実際はというと・・・。「チョー!」と声をかけてあおっておきながら思わず手綱をぐいぐい引きまくる私。「あ〜、もうどっちよ!」と斜め下から私を見上げる馬の目は冷たかった・・・。

  

 12:30、センターへ戻る。馬から下りた一同、普段使わない筋肉を酷使したために足腰がぷるぷるしている。そろりそろりと全員地球に優しい歩き方。

 13:00、昼食。久しぶりに激しい空腹感を抱えながら、よたよたとレストランへ。

 15:00、雨模様。旧タヒセンターに散策に向かう予定だったが、移動の途中ワゴンがぬかるみにはまってスタック!なんとか、皆で押し上げる(モンゴルでのこのシチュエーションって、すでにオプションだなあ)。結局この日はここであきらめ、ツーリストゲルへ戻る。

 ゲルでは、西村さんに、「ボフ」という大小の石ころを狼と羊たちに見立てた陣取りゲームを教えてもらう。

 19:00、夕食。

 20:00、バトサイハンさんコンサート(レストランのオープンスペースにて)。

 脂ののった馬頭琴の独奏が続いた。早い曲からオルティンドーまで、悠々と弾きこなす姿には圧倒されるものがあった。

 最後の方で、彼は日本の曲のメドレーを弾いてくれた。「ふるさと」や「赤とんぼ」など、かなりいろいろな曲を次から次へとテンポ良く軽快に。思わず「・・・ああ、違う」とつぶやいてしまった。「その曲はもっとしんみりと聴きたいんです。日本人がその曲に託す歌の心はもっとじ〜んとしたものなんです」そこまで思って、はっと我に返った。これはまったく、「逆もまた真なり」ではないか。つまり、私たちがモンゴルの曲を弾いたり物語を演じる場合も。楽譜どおりに弾く大切さもさることながら、その曲に託されたイメージを理解して弾くことがどれだけ表現を深めることか・・・。頭ではなんとなくわかっていたことを、痛感させられた瞬間だった。


<私服のバトサイハンプロ>

 終演後、ツアー中皆を載せて移動するワゴンを運転してくれているバートルフーさんが、女性ゲルにガンガさんという若い綺麗な女性を連れて来た。彼女は現在、ここタヒセンターのツーリストゲルで清掃スタッフとして働いているのだが、大学ではオルティンドーを学んでいたという。そう言えば、昼間、どこからともなくオルティンドーが聞こえていた。彼女が練習していたのだろう。さっそくSくんの馬頭琴の伴奏で歌を披露してくれる。可憐で美しい高い声だ。モンゴルの現状として、せっかく大学で勉強しても、大半は彼女のように音楽とはまったく別の仕事についてしまう人が多いらしい。

 ガンガさんは、馬頭琴の伴奏で歌えることに興奮していたらしく、「この曲は知ってる?じゃ、これは?」とSくんに訊きながら、次から次へと歌を口ずさみ続けた。

 


◆8/2(火)はれ

8:00過ぎ、起床、朝食。乗馬疲れ? ひどい筋肉痛・・・。皆ぐっすり。

10:00、乗馬、炎天下。これは苦行でしょ・・・。

 

 
<馬上で写真撮影>     <乗馬後のラジオ体操>

12:30、ゲルに戻る。
13:00、昼食、以降は昼寝タイム。


<皆さん、盛りがよくなってきました>

16:00、起きたけど、ぼ〜っとしたまま。

19:00、夕食。

20:00、ドプチンさんコンサート(小ホールにて)。


<会議室、売店、ホール>

 う〜ん、素晴らしかった!まさにいぶし銀の演奏。馬頭琴ソロはもちろん、歌あり台詞あり、とにかくしぶいのだ。選曲もよかった。西モンゴルのメロディは、普段耳にするモンゴル音楽よりエキゾチックな感じがする。何より、演奏中の彼の表情が豊かで、アーティストとしての大きな魅力を持った人だと思った。(残念ながら、演奏中の写真撮影は不可だった。)

 


◆8/3(水)くもり

 8:00過ぎ、朝食

 10:00、本日の午後に我々のツアーは引っ越しすると聞いていたので、ガンガさんに一昨日歌ってもらったお礼も兼ねてSくんのCDを渡しに行く。記念写真を撮って、感動的に別れた私たちを待っていたのは、・・・引っ越しキャンセルの通達。センターマネージャーのダブルブッキングで結局移動できないことになったらしい。・・・ははは、ありがちだ・・・。

 今晩のネルグイコンサートでは、ガンガさんにも歌ってもらうことに。

 11:00、乗馬組出発。Iさん・Yさん・Tくんの3人は今日も熱心だ。

 う〜ん、たまには草原でのんびりしたい。Sくんを誘って散策へ。

 

 

 13:00、昼食。乗馬をしなくても、きちんと食欲旺盛。たぶん、暑さそのもので体力が消耗してるのだろう。

 午後、先日のリベンジ。旧タヒセンターの先にある谷間へ散策に行く。先日スタックした場所をワゴンで通過する。ぬかるんでなければなんてことのない坂道だ。

 しかし残念ながら、案内役の西村さんが期待していた川は干上がっていた。その後、石人群を見学。

 「花畑」のはずの場所は、辿り着いてみるとどこへやら・・・。それでも、小一時間ほどみんなで遊んで帰途についた。

 

 

 19:00、ゲルに戻る。今夜の主役、ネルグイさんはもう到着していた。あいかわらずのひとなっつこい笑顔。約ひと月ぶりの再会だ。みんなで一緒に夕食。

 

 夕食後は、小ホールにてコンサート。ネルグイさんの演奏はあいかわらずパワー満点、しかもとても安定していて、腕に磨きがかかったような印象を受けた。

 ガンガさんとのセッションは、リハなしのぶっつけ本番だったせいか、初めちょっとぎこちなかったが徐々にペースを取り戻し会場を湧かせた。

 一部終了後、停電のため会場を外へ移すことになった。9時過ぎとは言え、灯りのつかない室内よりよほど明るくていい雰囲気だ。
そよ風も吹いている。

 二部は、再びガンガさんとのセッションから始まりSくんとの師弟セッションへ移行。観客(今回のツアー参加者の他に、欧米人の泊まり客も多数聴きに来ていた)からの大喝采を浴びた。(ちなみに、「ぽんちゃん、スプーンを持って来い!」とネルグイおじさんに言われ、私も一曲だけスプーンズで参加)

 終始、感嘆と拍手に包まれた楽しいライブだった。「ネルグイさんも、アーティストとしての華がある人だなあ」とつくづく思う。
開演時間が遅かった上内容が盛りだくさんだったので、終演する頃にはすでに真っ暗。

 ネルグイさんを見送ってからゲルに戻ると、まだ停電中。そしてさらに、・・・断水。しかも、ゲルの中には無数の小さな黒い水玉模様が発生。よく見ると、天井やら床やらが動くスイカの種でいっぱい(しかも大きめ)なのだ。明け方、顔がむずがゆくて目を開けたら、枕元で黒い甲虫とばっちり目が合った。


<この虫がうじゃうじゃと・・・>

 

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たなかたかこ TANAKA "pon" Takako