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『 自分の耳で』

(1999年 3月4日 NNL Vol. 13)


 喉歌を、演奏会等で初めて聴く人に紹介する時は、特定の先入観に結びつく情報を排して、中立的な態度を取るように心掛けている。喉歌に対する純粋な第一印象を、聴き手に完全にゆだねたいからだ。

 喉歌を取り上げるテレビ番組等では、しばしば特定の「第一印象」が視聴者に強いられている場合がある。喉歌は、遊牧民の神秘である、心を癒す音楽である、はたまた滑稽な曲芸である等々…。元々日本人の常識とかけ離れているこの歌は、人それぞれに多様な印象を与えるはずだ。ところが「喉歌とはこういうものだ」と主観的に紹介されると、初めて聴く人が特定の印象を刷り込まれてしまう可能性が高い。

 喉歌に限らず注意しなければならないのは、音楽に対する印象が本当に自分の耳と感性で感じ取ったものか、情報として外から与えられたものかを、はっきり区別することだ。ブームや先入観にとらわれることなく、自分を頼りに音楽を聴いていれば、必ず心から楽しんでいける音楽に出逢えるはずだ。

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のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp