『 企画する喜び』
(1999年 4月6日 NNL Vol. 14)
音楽には、聴くこと、演奏することの他に、あまり知られていないもう一つの楽しみ方がある。それは聴く側と演奏する側をつなぐこと、すなわち演奏会を企画することだ。立場上、多少面映ゆいテーマだが、企画の経験者として是非その独特の喜びを紹介したい。 企画する側には、出演交渉から打ち上げの手配に至るまで様々な仕事がある。結構楽しい作業もあるが手間はかかる。演奏会当日でさえ、忙しくて演奏を落ち着いて聴けないかも知れない。 しかし、演奏中に拍手やどよめきが起こって聴衆と演奏者双方の表情が輝く時など、演奏会の成功を祈り続けてきた胸中には、大きな喜びがわき上がる。自ら作り上げた演奏会で人々の心に感動が生まれる。その瞬間に立ち会うことは、企画する側の醍醐味と言えよう。 近年、音楽メディアの急成長をよそに、個人の企画する小規模の演奏会が徐々に増えている。暮らしの中で音楽と直に接するこの方法が、もっとも根元的かつ贅沢だということに、みんな気付き始めている。 |
のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp