『 マジカル・ストリングス』
(1999年 10月15日 NNL Vol. 19)
音楽には演奏者の生き方が映し出される。そしてそれが表現と調和する時、音色はますます美しく響く。 ケルト音楽のアンサブル「マジカル・ストリングス」として活躍するボールディン一家。彼らは、シアトルからフェリーを乗り継ぎ、車で一時間程の深い森の中に暮らしている。 母屋の隣のアトリエには、一階にケルティック・ハープの楽器工房、二階に森が見渡せるテラスと、家族が集まる練習室がある。燭台と聖書が置かれたサイドテーブルが、どことなく古き良き時代を思わせる。 昨年、彼らのライブを本拠地シアトルで観た。うち解けた雰囲気で聴衆と共に楽しむステージ。アイルランドの伝統音楽に、時としてアメリカ的な陽気さを交える独自のスタイルは、移民の多い地元の音楽仲間たちとの長い交流から自然に生まれたものだと分かった。 静かな森の匂い、音楽で続けるマイペースな暮らし、そして家族の深い絆が彼らの演奏の端々に伺える。気が付くと温かいメッセージが胸の奥に届いていた。 |
のどうたの会 嵯峨治彦 nodo@ma4.seikyou.ne.jp